【第8回】マイグレーション現象にも効果がありそう
- カーボン・ナノ・チューブを銀めっきに混ぜたら……
河合さん、CNT複合銀めっきは、銀めっきよりも接触抵抗が低いという特長があるのは分かりました。それで、次に、なんでしたっけ? マイグルなんとか???
「マイグレーション現象。それにも効果がありそうなんです」
は?……そのマイグレーション現象って何?そこから説明してくれませんか。
「いいですよ。現在の精密電子部品の中には、プリント基板のように、薄い絶縁材料のオモテとウラに、それぞれ薄くめっきをして、そのめっき部分に電気を流すものが数多くあります。ところが、高温多湿の環境下で電圧を上げると、絶縁材料が吸湿したり水を吸いつけたりすることに伴って、めっきした金属のプラス電極から金属イオンが絶縁材料を通り抜け、反対のマイナス電極にくっつき始め、それが次第に長くなってプラスの電極とマイナスの電極をつないでしまうことがあるんです。これがマイグレーション現象です」
え!? 絶縁材料の中を電気が通るようになっちゃうの? でも、それじゃ困るよな、きっと……。電子製品はますます小型化・軽量化し、しかも、どんな条件下でも同じように使用できるものが求められるようになってきているでしょ。そういう電子製品の核心部分である部品が、突然ショートしてしまうってことなんでしょ?
「そうです。だから、それをクリアする技術が求められているわけです。CNT複合銀めっきは、普通の銀めっきよりも、このマイグレーション現象が起きる時間を引き延ばすことができる。そういう実験データが出てきているんです。これはまだ研究段階ですが、様々な可能性を秘めていると思いますね」
なるほどねぇ。接触抵抗が低い、硫化に対する耐久性もある(第10回で解説)、マイグレーション現象に対しても効果がある可能性を秘めている(第11回=今回で説明)。その辺りが、電気の伝導性が良く、耐久性も良い(第9回で説明)ということにプラスするCNT複合銀めっきの特性ということなわけですね。
企画・執筆/毛賀澤明宏