【第9回】めっき液内部でのCNTの分散が鍵
- カーボン・ナノ・チューブを銀めっきに混ぜたら……
サン工業の新技術、カーボン・ナノ・チューブ(CNT)複合銀めっきについて開発課の河合さんに聞くシリーズの4回目。
では、河合さん、このCNT複合銀めっきはどういう方法でするの? そこが、サン工業さんが今度開発したことの核心ですよねぇ?
「CNT複合銀めっき皮膜の製法ですか? おっしゃる通り、そこが今回の新開発の核心です。もちろん特許出願中です。だからあまり詳しくは言えないんだけれど……まぁ、簡単に言えば、一般的な銀めっき液に特殊な分散剤を添加することで、CNTをめっき液中に分散させることを可能にした。これが一つ目のポイントだということですね」
へぇ? カーボン・ナノ・ファイバーを、「分散」させることがポイントになったの?
「そうなんですよ。CNTってすごく細かいですよね。放っておくと、めっき液に混ぜても絡み合って固まってしまう。ここが、CNT複合めっきの最大の問題だったんです」
冷たい水に粉末コーヒーを入れてもうまく溶けないでしょ、そんなことをイメージすれば良いのかな?
「そうですね。そのままめっきすると、CNTがたくさん集まっているところと、ほとんどないところができちゃいますよね。めっきにムラができてしまう。だから、めっき液の中に入れたときに、さっと、均質に全体に拡散するように、分散剤を入れるんです。もちろん、その中味はここでは言えませんが、その分散剤の開発が新技術の一つのポイントです」
一つのポイントという以上は、まだ他にもポイントがあるわけだよね?
「その通りです。液の中にCNTが分散しても、めっき処理をする条件――つまり、めっき液の温度や状態、液の中にめっきする部品を入れる時間や方法、かける電圧などによって、CNTが再びめっき皮膜のある部分に集まってしまうということもあるんです。これがめっきの不思議なところなんですね。それで、液の中に分散させるだけでなく、めっき皮膜の方にも、均一にCNTが広がるような、そして緻密にかつ滑らかに仕上がるような、めっきの条件を開発しなければいけないわけです。そこをやったというのが、今回の新開発の二つ目のポイントだといえるでしょうね」
なるほどねぇ。めっき技術ってそもそも奥が深そうなのに、CNTという新しい素材を扱うことによって、さらに細かな調整が必要な科学と技の世界に入って来たっていう感じですね。
でも、どうしてサン工業では、そういうことができたの?
「そのことは次回お話しましょう」
企画・執筆/毛賀澤明宏