【第15回】一歩先をいくサン工業の「無電解めっき」
- 「無電解めっき」初級編
無電解めっき初級編の最終回。サン工業が得意とする無電解めっきの基本的なことについて説明してもらってきましたが、この方法をさらに発展させているものはどういうものか? サン工業が誇る無電解ニッケルめっきの技術はどういう点か? 最後に、このあたりを教えて下さい。
「そうですね、無電解ニッケルめっきで、当社が一歩先を行っていると言えるのは環境対応だと思いますね」
環境対応というと……
「無電解ニッケルめっきをする場合に、従来は、めっき液の中に液の安定性を保つために鉛化合物を入れていたのです。このめっき液中の鉛が、どんなに工夫をしても、析出されるニッケルのめっき皮膜の中に混ざりこんでしまうという問題があったのです。ところが、環境問題が注目を集めるようになり、2003年2月に欧州連合(EU)から電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての指令(Restriction of Hazardous Substances(危険物質に関する制限)略してRoHS=ロース)が出されたり(2006年7月試行)して、鉛を排除しようという動きが徹底してきました」
欧州では2003年にすでにELV指令(使用済み自動車から発生する有害物質規制指令=End of Life Vehicles)が出されており、鉛やカドミウム・水銀・六価クロームなどの使用も規制されていましたよね。RoHS指令がさらに続いて、日本の製造業会社はその対応が迫られているとうわけだ。
「そうです。メーカーは、自社製品から鉛を取り除こう、あるいは最小限に止めようという動きをされています。サン工業では、この問題に早くから対応しており、現在6ラインある無電解ニッケルめっきのラインのうち、5つのラインがまったく鉛の入っていないタイプのものにしています。このラインはすべて当社のオリジナルなんですよ」
以前は、めっき液の安定剤として鉛を使っていたということだったけど、他に良い方法を開発したというわけだよね。
「めっき会社というのは、基本的に、化学薬品業者などのサプライヤーからめっき液を選択して購入し使用しているわけですが、当社ではほとんどオリジナルのサン工業スペシャルバージョンを供給してもらっています。それは、これまでの経験と研究の中で、培ってきたノウハウを元にしてできることです。やはり環境対応を一歩先んじて進めてきた。その成果が出ていると思いますね」
サン工業の無電解めっきが、他の会社に先んじている点を他に挙げるとすると?
「無電解ニッケルめっきのクロメート処理というのも挙げられますね。ニッケルめっきの変色を防ぐために従来は六価クロームを使用してきたのですが、先にも述べたRoHSとかELVとかの指令で、六価クロームを使用できなくなって来ています。当社では、独自のめっき液を使用して、クロムフリーにも対応できるようにしてきています」
やはり環境対応で、一歩先んじたというわけですね?
「そうですね。他のめっき業者さんがまだ対応されていない時から、様々な試行錯誤を重ねて、自力でノウハウを培ってきたことが大きいと思います。そういう経験があるから、様々な試作にも対応できるようになり、お客様のニーズに応えられる体制を整えてくることができました。こういう会社はまだあまりないと自負してます」
クロメート処理とか、様々な試作ラインとか、これから説明してもらわなければいけないことがたくさんありますね。それは、また別のシリーズで扱うとして、河合さん、無電解めっきとは何か?その初級編、とても分かりやすい説明ありがとうございました。
企画・執筆/毛賀澤明