【第12回】「無電解めっき」って何なの?
- 「無電解めっき」初級編
シリーズ「無電解めっき」初級編の2回目。サン工業が「無電解ニッケルめっき」を得意分野とすることは前回説明してもらいました。でも、そもそも、「無電解めっき」って何なの?
河合さん! 確かに僕は私立文系だけど、一応、イオン化傾向とかは子どもの頃に教わっているんだよ。イオン化傾向が比較的小さい金属を含んだ水溶液、例えば硫酸ニッケルを溶かした水とかを用意して、ニッケル板をプラスの極にして、一方、それよりイオン化傾向が大きい例えば銅版をマイナスの極にする。そこに電気を流すと、プラス極でニッケルのイオン化が進行する。その一方、マイナス極ではイオン化したニッケルがマイナスの電子と結合して金属として還元され析出する。それが、めっきの原理だと教わったと思うんだよね。……そのめっきがさぁ、どうして電気がなくてもできるの?
「お、なかなか知っているじゃないですか。でも、そこまで知っているのなら、もうちょっと先を考えて欲しいですね(笑)。今のは中学生の頃に行った理科の実験の説明だと思いますけど、要は、ある金属イオンを含む水溶液の中に、別の金属を浸し、そこで電子の引渡しが行われれば、溶液中の金属イオンは金属に還元されるということなんですね。別に電気はなくても、そうなりますよ。これがめっきの原理ですよ」
は????電気を流さなくても電子の引渡しができる???どうして?……
「例えば、イオン化傾向の大きな鉄の板を、イオン化傾向が小さな銅が溶けてイオン化している硫酸銅の水溶液に浸すとしますよね。そうすると、鉄の方が自分で溶解し、溶解する時にマイナスの電子を放出します。すでにイオン化している銅は、このマイナス電子を受け取って、金属に還元し析出するんです。電気は、別に必要ありません。これを置換めっきと言うんです」
え!?溶け出す金属と、すでに溶けてイオン化している金属との間で、電子の引渡しが行われるわけ?
「そうです。今説明した鉄と銅の場合だと、鉄の板の表面を析出した銅がびっしり覆うまで、この置換めっきは進みます。覆われてしまうと止りますけどね。でも、これって、さっき話された電気めっきの実験のすぐ後あたり教えてくれたんじゃなかったかななぁ?」
う……
「この置換めっきが無電解めっきの一つですね。それ以外にも自己触媒めっきというのもあるんですよ」
は、はぁ……。ではそれは次に教えて下さい。
企画・執筆/毛賀澤明宏
置換めっきの仕組