【第23回】アルマイトって何だろう その5
- アルマイトってなに?
今回はアルマイトの色について。
アルマイトは液の温度を低くすると硬くなる。同時に色が濃くなる。たとえば硫酸アルマイトの場合、硫酸に含まれている硫黄が、低温になるほど金属にくっつくので色が黒くなる。単純に言って、硫酸アルマイトは硬くなればなるほど色が黒い。同じ硬質アルマイトをうたっても、薄いグレーのものより、黒みがより強い方が硬いというわけ。
こんな話を聞いた。アルマイト処理を発注し、上がってきた製品を見た担当者が、どうして加工会社によって製品の色が違うのか、あるいは同じ業者に出してもロットごとに色が違うのか不思議に思い、自分も自社の顧客への説明責任もあるから、仕事を出しているアルマイト屋さんに聞いてみた。けれど、その会社では教えてくれなかった。
業者によって色が違うのは、会社ごとに硬質アルマイトを処理する条件が違うからかだろう。たとえば液温が、A社とB社2社の間で違っていて、結果としてA社のアルマイトがビッカーズ硬さHV300で、B社のがHV400だったら、当然色も変わってくる。「黒いのをグレーにしてくれ」とか「もっと黒いアルマイトがほしい」と発注者が言っても、アルマイト屋さんの方で処理条件を変えなかったら、違う色のものは出てこない。
徹底した管理技術により、「硬さ」と「色」を思い通りに仕上げてくれる。
同一業者でロットごとに色が違う場合は、液温などの管理が徹底されておらず、処理するときの条件にバラツキ出てしまったとも考えられる。「徹底されていない」では語弊があるなら、厳密に管理することのコストや手間が大きいため、対応しきれないという言い方もある。業者によって色が異なり、その色の変更が容易にきかないのも、細かな条件設定とその管理が難しいからかもしれない。まあ、それは余所のお話。だから想像の域を超えない。
サン工業が狙っているのは、硬さも色も、お客様要求にピンポイントに応えるアルマイトだ。だから、硬さはどの程度必要か、色を薄くしたい場合はどんな色がよくて、その際に硬さはどのくらい妥協できるか、細かな仕様についてお客様と意思疎通する。仕様が決まると、これにピタリと敵う製品にするため、処理条件をシビアに管理する。長年めっきで培ってきたノウハウと技術があるからできることだ。
さて次回は、アルマイト処理の工程を具体的に見ていこう。