【第21回】アルマイトって何だろう その3
- アルマイトってなに?
毎度毎度分かりやすい説明で、表面処理のめくるめく世界を案内してくれる榎堀さんは、五里どころか一里先さえおぼつかない僕のような素人にとって、とてもありがたい存在だ。だって最初は足下さえ見えなかったのだから。そして、ほんの少しでも周りが見える余裕ができると、不出来な生徒とて質問してみたくなるもの。これは人情だ。
「硬質アルマイトという表面処理があって、一方でめっきにも硬質クロームめっきのような処理がありました。とにかく硬いという機能では同じですが、両者はどう使い分けられているのですか」 師答えて曰く、「アルマイトを選択する理由には、おもに3つあります。まず、アルミという素材を使うことで、軽く熱伝導性が良いこの金属の特性を製品の中で活かしたい場合。ただし、アルミにめっきすることは難しいので、アルマイト処理を選びます。
次に、アルマイトの方が正確な寸法を出しやすいというメリットがあります。以前にお話しましたが、めっきは製品の端や角が肉厚になりやすいという性質があります。対してアルマイトの表面にできる酸化アルミニウムの膜は電気が流れにくいので、ほぼ均一に膜を形成できるのです。
もう一つの大きな理由はコストです。めっきでは金属が溶けた液を使う分、値段が高くなります。片やアルマイトは乱暴な言い方をすれば、電気と水があればできますから」
ほかに、表面処理を施した後の製品のすべり易さはアルマイトの方が優位なのだそうだ。ただし、アルマイトが不利な点もある。アルマイト処理により錆びにくくなるとはいえ、アルミは腐食しやすいのだ。その原因をつくるのが、アルマイトの表面に生じるクラックという微細なひび割れだ。アルマイトの膜はアルミニウムの表面に対し垂直に成長するため、真っ平らな板の上ならともかく、製品の形状が複雑になると、クラックも生じやすい。このクラックが大きく欠けてアルミの地金まで届いてしまうと、そこから製品が錆びてしまうことも想定される。
だがサン工業のアルマイトは、クラックの発生を極力抑え、こうした不具合を許さない。同社にはめっき技術をベースに培ってきた業界トップレベルの管理技術があるからだ。特に、液の薬品管理については、極めてシビアな管理を同社は行っている。そのあたりの事情については次回以降にお話しします。お楽しみに。