【第51回】亜鉛めっき 錆びないヒ・ミ・ツ♡ その4
- 亜鉛めっき 錆びないヒ・ミ・ツ
亜鉛めっきは性能に優れ、コストも小さいことから広く普及しているめっきだが、これまでも書いたように環境リスクを伴う。六価クロメートやシアンを扱うからだ。万全な設備のもと、どれほど徹底した管理をしても、お客様の方では自分たちが発注し納品された製品がそうした製造工程を経ていることを懸念し、万が一にもその製品から環境や人を害する物質が検出されるリスクを廃したいと思う。もっともなことだ。
「環境リスクフリーは、めっき屋にとって最も大きなテーマの一つです。」と市河さんも話す。数年前にはこんなこともあった。三価クロメート処理であってもその液中にコバルトが入っていると、クロメートの性質を三価から六価へ変える可能性があると指摘する論文が出た。確かにクロメート処理の液中には硫酸コバルトが入っている。三価クロメートの耐食性を補うためだ。そのコバルトが欧州の規制で高懸念物質リストに載ってしまった。当時コバルトの相場が上昇傾向にあったことも手伝い、「三価クロメートをコバルトフリーで」という要求が増えたのだ。
サン工業の対応は速やかだった。まず、コバルトフリーのクロメート処理液を仕入れ、コバルトが入ったそれと比較して機能性等品質に変わりがないことを明確な数値をもって示した。確かなエビデンスがあれば、お客様もこの先も安心して亜鉛めっきとクロメート処理をサン工業に任せられる。併せて市河さんは自らコバルトフリーの三価クロメート処理液の開発に着手した。
「結果的に液の独自開発は失敗しました。当然ですけど、液の成分表示には表れないノウハウが薬品メーカーにはあるんですね。」亜鉛めっきの需要は今後も安定して伸び、サン工業では自動車部品以外にも医療分野などにも市場が広がっていく可能性があるそうだ。だからこそ「環境リスクへの対応は先手先手で進めます。」と市河さんは話す。
一方、今後流行りそうな亜鉛めっきとして、トップコート被膜を施した製品を挙げてくれた。三価クロメートの化成皮膜の上にさらに樹脂系の被膜をつけるのだ。こうすることで、亜鉛ニッケル合金めっきと同等の強さを持たせられる。しかも亜鉛ニッケル合金めっきのデメリットである2次加工性の悪さや高コストという課題もクリアできるという。処理自体もドブ漬けするだけなので楽とくれば、確かに伸びる可能性がありそうだ。
「現状では、トップコートは乾燥するとシミが出やすく、液の値段がまだ若干高いという課題はあります。しかし、薬品メーカーもいろんな製品をどんどん出していますし、うちでも試作を重ねています。」
亜鉛めっきはこれからもめっき屋のデフォルトであり続けそうだ。亜鉛めっきをご用命のお客様は、開発課市河へお問い合わせください。