【第49回】亜鉛めっき 錆びないヒ・ミ・ツ♡ その2
- 亜鉛めっき 錆びないヒ・ミ・ツ
なぜ亜鉛めっきは錆びないか。もう少し正確を期して言うと、鉄にめっきした場合を例にとると、なぜ亜鉛めっきを施した鉄は錆びにくいか。
ここで鉄に亜鉛めっきをしたものと、何もしない鉄そのものを比較してみよう。亜鉛は大気中では優れた耐食性を持つ。当然前者の方が錆びにくい。しかし、亜鉛と鉄のイオン化傾向は亜鉛の方が大きい。つまり亜鉛は水に弱く、鉄より錆びやすいのだ。おいおい。大丈夫か?だったらもっと違う金属でめっきした方がいいじゃん!と、僕なんかは安易に思う。でも、金属の表面で起きていることは、素人の想像をはるかに超えて神秘である。
過酷な環境にあって、亜鉛めっきの最表面は溶け出し錆びる。しかし、錆びることによって水酸化亜鉛の被膜をつくり、まだ錆びていない自らの腐食の進行を遅らせるのだ。こうして亜鉛は、長い時間をかけ自ら錆びながら、自ら消耗しながら鉄を守る。これを亜鉛めっきの犠牲防食作用(ガルバニック・アクション)という。天晴れである。しかも亜鉛めっきはコスト面でも有利だ。なんと健気な奴なのだろう。
亜鉛のその奇特さを応援せずにはいられないではないか。そこでクロメートの登場である。亜鉛めっきの層の上にクロメートの層を施すことで、亜鉛の腐食を防ぎ、さらに耐食性を高めてあげる。
ここで亜鉛めっきの工程をざっと紹介しておこう。まず前処理として、製品に付着している油脂や錆びなどの汚れを取り、表面をめっきに適した状態にする。次に亜鉛めっき層に入れるが、サン工業の場合3つの手法がある。①ジンケート浴、②シアン浴、③酸性亜鉛である。鋳物などには③を使う。①と②は液の組成が違い、シアンが入っているとつきやすいから厚物に向いている。ただし、シアンは危険な物質なので、環境リスクをマネジメントすることが絶対条件だ。その点、サン工業はシアン専用排水を備えるなど、大きなお金を投資して万全の処理をしている。
亜鉛のめっきがついたら、酸活性をする。めっきしたての粗い表面を薄めの硝酸を使って平滑に仕上げる作業。これが済んだらクロメート処理にいく。お客様の用途、ご要望により、六価タイプと三価タイプがあり、色もユニクロ、有色、黒色等があることは前回述べた通り。
工程の各々にめっき屋のノウハウが詰まっているが、肝となるのは治具と液の管理だと開発課の市河さんは言う。そんな市河さんは今、亜鉛めっきよりさらに耐食性を高めた亜鉛合金めっきの開発にも勤しんでいる。最近そのニーズが増えているそうだ。そんなこんなも含め、亜鉛めっきでこんなことが出来ないか等のお問い合わせは、開発課市河さんまでお寄せください。