【第3回】マグネシウムは腐食に弱い
- マグネシウムの化成処理ってナニ?
注目の金属=マグネシウムの表面処理について製造課開発Gの榎堀さんに聞く、シリーズの第二回。
前回は、軽く耐久性に優れるマグネシウムは、携帯電話やデジタル一眼レフカメラのボディなどの素材として注目されているけれど、腐食に弱いという弱点を持ち、その克服のためのマグネシウムの表面処理技術の確立と高度化が求められているという話だった。
「腐食に弱いと言っていってもどの程度のことなんですか?」。榎堀さんに質問してみた。
すると、榎堀さんは実験室からビーカーとマグネシウムの部品を持ち出してきて説明を始めてくれた。結構、説明好きなよう。こういう人と出会うと、なぜかこちらの好奇心も駆り立てられてくる。
「マグネシウムは、通常の大気中にさらすと、すぐに表面に酸化膜の不動態が生成されます。分かりやすく言えばマグネシウムの表面が空気中の酸素を化合して酸化するのですが、これが表面を覆うことで、それ内部のマグネシウムがそれ以上変化することを防ぎます。だから不動態と呼ばれます」
「え? そうだとすると、あまり腐食が進まないのではないですか?」と私。
「普通の大気中にそのまま置いておくだけだったらそうです。でも、塩分とか不燃性のガスとかがちょっとでもあると、もうだめなんですよ。ちょっと見ていて下さい」
榎堀さんはそういうと、持って来たビーカーの中にマグネシウムでできた部品をポチャリと落した。中の液体はpH4の少し酸性の水溶液。pHとは中学校で習ったこともあるように酸性・アルカリ性を示す数値でpH7がちょうど中間、それより少ないと酸性、多いとアルカリ性。pH4はちょうどビールと同じくらいの酸性度だそうだ。
間もなく小さな泡が出始め、しばらくすると、シュワシュワと小さな泡がマグネシウムから吹き上がった。
「pH4でこんなに腐食してしまうんです。だから酸性雨ぐらいでアウト。他に塩とか亜硫酸ガスとかにも弱いので、そのままでは日常的な使用に耐えられる金属じゃないんですよね。それで、その腐食が進まないように、表面処理をするわけです」
なるほど、なるほど。では、その表面処理のプロセスを次に説明してもらいましょう。
企画・取材/地域産業ライター 毛賀澤明宏