【第5回】新技術―マグネシウムのメッキ
- マグネシウムの化成処理ってナニ?
利用価値は高いがそのままでは腐食が早いマグネシウム。
サン工業では、この表面に化成処理を加えることで腐食しにくくし、様々な用途に使用できる状態にしている。化成処理を施すことによって、塗料や接着剤の密着性が高まるなどの機能も上がるという。
だが、それだけではない。
化成処理にとどまらず、従来難しいといわれてきたマグネシウムへのメッキ加工にも、サン工業は現在取り組んでいる。
「マグネのメッキも、だいぶいい線に近づいています。率直に言って、大きい部品は結構難しいですが、小さい部品ならメッキでもいけるようになってきました。いろいろ試作品にトライしていますが、大きさとロットによっては量産にも対応できそうです」と開発グループ主任の榎堀さん。
もともとマグネシウムは、素材の中に含まれる炭素などの金属以外の物質の比率や、ダイカストという成型方法の影響を受けやすい性質(空気を中に含みこみやすい)などにより、メッキの難しい金属とされてきた。
事実、素材メーカーは6~7年前からマグネシウムを次世代金属として注目していが、メッキの際に「ふくれ」(内部に含まれた空気が、加工後に膨張して膨れ上がってしまう不良)などの発生率が高く、メッキの困難性が用途拡大のネックになってきたのだという。
だが、こうした状況に変化が出てきている。
「近頃、マグネシウムのメッキが再注目されている要因は、第一にマグネシウムの素材作りや成型技術が向上して、メッキに向いたマグネシウムが開発されつつあること、第二にメッキ屋の技術が進歩して、マグネメッキの展望が開けてきたこと――の二つがあるんです」と榎堀さんは話す。
榎堀さんが強調したのは第2の点。
メッキの仕事は、メッキに使用する薬品のメーカーが新しい溶液などを開発し、その使用のプロセスを明確にして、各メッキ会社に提供する。各メッキ会社は、それをもとに仕事を進めるのが一般的だ。
しかし、マグネシウムのような新しい金属に挑戦する場合には、薬品メーカーのプロセス通りに仕事してもうまくいかないことが多い。素材の質や形状・気温・湿度・前工程の加工会社の仕事の影響などを要因として、様々な違った反応が生じる。この様々な反応に対応してうまくメッキをする技術は、各メッキ会社のノウハウの蓄積に関わってくるのだそうだ。
サン工業は、マグネシウムのメッキが注目を集め始めた6~7年前から、技術的な困難さを理由に他社が開発から撤退する中で、地道にその方法と技術の研究を進めてきた。その蓄積によって、新たなマグネシウム素材が出されたり、薬品の向上が進んだりする中で、他社より、2~3歩先を行くマグネシウムメッキが可能になっているのだという。
※マグネシウムのシリーズはこれで終わり。次回からは無電解メッキのシリーズが始まります。
企画・取材/毛賀澤明宏