【第45回】こんなことができるんだ!分析装置 その7 輪郭形状測定器&マイクロビッカース硬さ検査機
- こんなことができるんだ!分析装置
「今日は表面解析室の外へ出てみましょうか?分析装置というより測定器なのですが、私たちの仕事を地味に支えてくれています」。そう言って開発課主任児玉さんがまず案内してくれたのは、製品検査をする部屋だ。10数名の女性が顕微鏡を覗きながらてきぱきと働いている奥にその装置はあった。輪郭形状測定器という。
名前からして何をするかは想像がつく。問題は如何にするかだ。除震台の上に載った装置には、金属製の細いアームの先に針が付いている。この針が測定対象物の表面に触れながら、X方向(左右)及びZ方向(上下)に移動し、形状を数値化するという。まるでアナログレコードの溝をプレーヤーの針がなぞりながら、曲を奏でるように。
「あるお客様の仕事で、製品の角に丸みを持たせるため電解研磨をした時、要求されたRがちゃんと出ているかこの装置で計りました」。感慨深そうに児玉さんが言う。他に、めっき処理後のバリ取りがきちんと出来ているか確認したり、表面の粗さを測ったりする際も使うそうだ。確かに派手さはない。けれどその動きゆえか、輪郭形状測定器がとても健気な奴に思えてきた。
「もう一台は前に見たことのある機械ですよ」。児玉さんと向かったのは、無電解ニッケルめっきラインの近くにある部屋だ。ここには以前、前開発課長榎堀さん(現製造部長)と来た。現開発課長の河合さんとも来たことがあるぞ。めっきやアルマイト処理の硬さについて紹介した時、その装置も出てきたはずだ。マイクロビッカース硬さ試験機である。
ビッカース硬さは硬さを表す尺度の一つだ。ダイヤモンドで出来た圧子を試料に押し込んで、そのときできる圧痕(くぼみ)の面積の大きさで、試料の硬さを判断する。圧子の先端は四角錐をしているから、圧痕の対角線の長さを測定すれば面積が分かるのだ。サン工業にある試験器は自動測長タイプで、圧痕付けから測長までを自動で出来るから、人による測定誤差が出ず、より正確な結果が得られる。
最近この装置をよく使う一人が、銀めっきスペシャリスト宮川さんだ。めっきを施す条件(時間、温度、電気、液の成分等)で硬さがどう変化するか、試作するたびここで確認する。直近約5ヶ月にわたる膨大なデータは、彼女の妥協を知らない生真面目さを大いに物語っていた。
サン工業にはいろんな種類の分析装置や計測器がある。毎度こんなこともできるんだと感心することしきりだ。でもいちばん頭が下がるのは、そうした装置に向き合う人たちの一途さ、ひたむきさである。
さて、前回予告した新SEMがサン工業にやって参りました。調整を経て3月末より本格稼働いたします。ところが最近、元からあるSEMの調子が悪いのだとか。「どうせみんな若い子がいいんでしょ」って、機械もすねるのかしら。2人(?)の関係や如何に。続報を待て。