同じ製品内でアルマイトと無電解ニッケルの部分を作りたい
顧客のお困りごと
医薬品製造装置の水冷式冷却板をアルマイト処理して使用していたが、冷却水の流れる内部にはアルマイト処理ができないことから、腐食が発生していた。
内部にめっきできる無電解ニッケルめっきも検討していたが、製品の外側はニッケルを嫌う製品のため、全体を無電解ニッケルめっき処理することはできない。
外側の処理はアルマイトにしたままで、内部の耐食性を上げたいがなかなか良い方法が見つからずに困ってしまっていた。
アルマイトは製品全体で膜厚のばらつきがない処理で水環境での耐食性も良好ではあるが、電気を使用する処理であり、パイプの内部には処理することができない
アルマイトの無い部分はアルミニウムがむき出しになるので、腐食が進んでしまう
無電解ニッケルめっきはパイプ内面など、めっき液が接触していればめっきすることができ、耐食性も良好だが、食品関係など、一部の製品にはなかなか使用できない
アルマイトと無電解ニッケルめっきをうまく組み合わせて処理できないかを検討したいが、両方を相談できる表面処理メーカーが少ない
サン工業の提案
先に全面を無電解ニッケルめっきしておき、その後、ニッケルを残したいところをマスキングし、陽極酸化処理することで、不要部のニッケルは陽極電解にて溶解除去される。ニッケルが除去されたのちは、露出したアルミニウム上に陽極酸化皮膜が生成するので、必要な膜厚になるまで処理を行ったのち、洗浄、乾燥する。その後、マスキングを取れば、同じ製品に無電解ニッケルめっきの部分とアルマイトの部分を作ることができるのではないか?
無電解ニッケルめっきは硫酸アルマイトの陽極電解で溶解除去される
したがって、全面にめっきした後に、ニッケルとして残したい部分をマスキングする(写真は見本サンプル)
マスキングした状態でアルマイト処理すると、表面に露出したニッケルは陽極電解で除去されるので、そのままアルマイト処理が進行する
処理後にマスキングを除去すると、同一製品内でニッケルめっきとアルマイトの部分を作ることができた
問題解決に関わり提供できる技術等の優位点
同一製品内で表面処理を分けることで、複数の機能を持たせることができるようになりました。サン工業はめっきやアルマイトを中心に25種類以上の量産ラインを持ち、ラインに無いものでも試作ラインや実験室で処理することができます。今回の事例は、多くの処理を手掛けるサン工業ならではの課題解決事例ではないかと考えます。
担当者の声
最初に相談を受けた際にはとても無理だと考えていましたが、いろいろと工夫して処理をすることで、お客様にもご満足いただける製品を作ることができました。
今回の事例は水回りの腐食対策が中心でしたが、アルマイトは導電性は無いものの、カラー処理ができたり、アレルギーが起きにくかったり、寸法安定性が高いなどめっきには無い多くの特性があります。部分的にニッケルめっきにしたりできるようになると、部分的に接点を作ったり、静電気を逃がしたりなど、新しい用途にも応用できそうな、発展性のある処理が開発できたと思います。