インサート成型品のしみ出し汚れ低減
顧客のお困りごと
自動車用モーター部品で、樹脂と金属のインサート成型品への無電解めっきをしなければならないが、他社めっきメーカーでは隙間からのしみ出しが多く、約10%程度の外観不良が発生していた。めっきの種類自体も特殊なもので、対応できるめっきメーカーも少なく困っていた。
問題点1製品がインサート成型で、樹脂と金属の間に隙間が生じてしまう構造だった
問題点2成型品内部構造が複雑で、めっき液が中にしみ込みやすい構造だった
問題点3めっき液や前処理液の粘度が高く、いったんしみ込むと洗浄が難しかった
サン工業の提案
製品構造上、しみ込みが発生しやすい材料であることが判ったため、前処理やめっき条件、洗浄工程まで含めて、全ての工程を見直すこととした。特に後洗浄では、粘度の高いめっき液を排出させる目的で、高温の湯洗を複数回行うことを提案した。
ポイント1めっき処理温度とめっき速度、汚れ発生の頻度をデータ化し、汚れが発生しづらく、作業性を低下させない最適条件を探した
隙間からの毛細管現象を防止するため、めっき粒子が微細化できるようなめっき液を選定した
水洗や湯洗の工程を検証した結果、浸漬時間と汚れの発生に相関が見られたことから、短時間で複数回繰り返す洗浄方法を導入 洗浄⇨エアーブローを繰り返すことで、隙間に入った汚れを除去することができた
解決できたこと(成果)
試作を重ねた結果、脱脂を行う必要が無いことが判明した。脱脂を省くことで、樹脂部分の濡れ性が低下し、製品内部へのしみ込みが抑制された。
また、めっき条件として、高温処理だとしみ込みやすいことが判明したため、可能な限り低温で処理条件とした。めっき後の洗浄工程では、しみ込んだめっき液を排出させるため、短時間での湯洗、エアーブローを複数回繰り返すとともに、変色防止効果の高い撥水性変色防止剤を選定することで、さらなる耐食性の向上を実現した。
数値的には、不良率を10%程度から0.1%以下まで低下させることに成功した。
問題解決に関わり提供できる技術等の優位点
・インサート成型された真鍮素材へのめっきにおける、めっき液の選定や洗浄方法、変色防止剤の効果など多くの技術的課題の追究
・多くの薬品評価の実績から、製品にあった最適なめっき液の選定、組み合わせによる品質の作りこみ
・試作結果が良かったこと受け、2~3週間での量産設備構築
担当者の声
非常にハードルの高い品質改善でしたが、不良率が大幅に下がったということで、お客様にも大変喜んでいただきました。弊社に依頼がくるようになって、もう10年以上が経過しましたが、現在も処理の依頼をいただいており、うれしく思っています。