ヘレン・シャルフベック展
- 密かな楽しみ
- ほんの出来事
東京芸術大学美術館で開催されている「ヘレン・シャルフベック展」に行ってまいりました。
知人から東京芸大で開催していることを教えてもらうまでヘレン・シャルフベックについては、全く耳にしたことのない女性画家でありました。ですから、どのような女性で画家であったのか興味を持ちながら全くの白紙の状態で展示会を観ることになりました。
1892年にフィンランドのヘルシンキに生まれた彼女は、3歳の時の事故により足が不自由になりました。その才能をフィンランド人画家アドルフ・フォン・ベッカーに見出され、20歳前後でパリに留学し、その才能を開花しました。その後2度の失恋を味わい、その都度画風が変わり、より内面的な絵をえがくようになったのです。
彼女の絵から、女性が持つ感性の瑞々しさとその心の変遷によるタッチの変化とがダイレクトに伝わってくる彼女の絵に魅了されました。
特に彼女は自画像を数多く描いていますが、初期の自信にあふれた新鋭画家としての彼女の表情と晩年の死を意識した自身の儚さと危うさを吐露した絵との対比は、驚くほど自分に正直で、自分自身と真正面から対峙し続けた彼女の素直な、しかし誰にも譲れない心の強さがよく伝わってくる自画像で、とても惹きつけられる画家なのでありました。
こうした素晴らしい才能を持った画家と出会えることに新鮮な喜びと、これからもこうした知らない画家との出会いを期待しつつ美術館を後にいたしました。