フェルディナント・ホドラー展
- 密かな楽しみ
- ほんの出来事
日本とスイス国交樹立150周年事業の中核イベントとして、上野「国立西洋美術館」に於いて開催されているフェルディナント・ホドラー展を見てまいりました。
わたしは今まで全くホドラーのことを知らず、たまたまNHKの日曜美術館に取り上げられているのを見たので知った訳で・・でなければ、ホドラーという画家に興味を抱くことも無かったと思います。
事前のTV番組によるインフォメーションを得ていたので、普段より余裕を持ってすべての作品を観ることが出来たと思います。
ホドラーは観光用の風景画から絵の世界に入り、フランス写実主義やバルビゾン派の影響を受けたのち、スイスの慣習的風景画から脱皮しました。
32歳までに全ての肉親を病気で失った彼は、目に見えない人間の内面や精神活動を重視し「憂鬱」「内省」「死」のイメージが作風に色強く反映された作品を描くようになりました。
その後、ホドラー独自の思想である、自然の世界には様々な秩序が隠れていて、類似する形態の反復やシンメトリーをなす構造がいたるところに存在する・・ということを「パラレリズム」(平行主義)とよび、その画風は「よきリズム」という意味をもつ「オイリュトミー」以降の作品の主要なテーマとなりました。
1808年にはスイスの新紙幣のデザインを依頼されるなど、スイスの「国民画家」として多くの人々に愛されたのでした。
彼の作品の深層に常に漂っている「憂鬱」「内省」「死」を感じながら、彼の静謐な世界と時間をしばらくの間共有できた貴重な体験となりました。
この時期としては初めてという強烈な冬型気候から一夜明けたホテルから見た、久しぶりの東京での素晴らしい富士山の姿にも感動いたしました。