潤滑無電解ニッケルめっきのテフロン含有量って?【FIB(収束イオンビーム加工装置)の活用その2】
- ニッケルメッキ
FIB(収束イオンビーム加工装置)は、ガリウムのイオンをサンプルに照射して、当たっている領域の原子を吹き飛ばしながら穴をあけて加工していきます。ナノオーダーでの加工が可能なことから、めっきの断面観察のみならず、超微細加工にも応用されている最新の微細加工機です。
さて、サン工業ではカニフロンやニコジットといった無電解ニッケルめっき皮膜にテフロンの微粒子を複合した、いわゆる潤滑めっき(潤滑無電解ニッケル、テフロン含有無電解ニッケル)の処理を行っています。ただし、テフロンの含有量は液の更新タイミングなどによって微妙に変動することが分かっています。今回は、手作業での断面研磨ではなかなか見ることのできない、テフロンの状態や表面状態の確認をFIBを使用して確認していきます。
テフロンの状態や表面状態の確認をFIBで確認
下の写真は、潤滑無電解めっきの断面をFIBで加工したものです。
めっき断面を観察すると、皮膜中の黒く点々が見えていますが、これがPTFE微粒子が埋まりこんでいる部位になります。
また、この写真のめっきはステンレス素材にめっきしたものですが、ステンレスとの密着性を向上させるためのストライクニッケルめっきも断面で確認することができます。このPTFE微粒子やストライクニッケルの断面は、手作業による断面研磨では確認することが難しいですが、FIBを使用することで容易に見ることができるようになります。
ビームで表面をエッチングする
また、こういった潤滑めっきは、表面にどれくらいPTFE(テフロン)の微粒子が分散しているかを確認することも重要なのですが、潤滑めっき後は、表面にテフロンが付着しており、なかなか埋まりこんだ状態までを確認することができません。しかし、FIBの「ビームで表面をエッチングする」という能力を用いることで、表面に付着したテフロン微粒子を優先的に除去し、クリーンな状態での表面観察もできるようになります。
下の写真は、FIBでのエッチング前ですが、表面に黒っぽく見えるのが付着しているテフロンの集合体になります。
テフロンの集合体
FIBで埋まっている微粒子を観察
この表面にFIBを弱く照射すると、表面に付着したテフロンが除去されて、埋まっている微粒子を観察することができるようになります。下の写真で表面に点々と見えるのがテフロン微粒子の埋まっていた部分になります(写真は同一箇所を同一倍率で撮影したものです)。
電子顕微鏡と同様の画像を入手することもできるFIB
この部分をさらに拡大すると下の写真のように無数の穴が開いていることが観察できます。FIBでは金属よりもテフロン微粒子の方がエッチング速度が速いので、このように穴が開いた状態に見えるのです。FIBはガリウムイオンを照射して表面を加工していく装置ですが、電子顕微鏡が電子をぶつけてその反射から、電子顕微鏡写真を撮影するように、ガリウムイオンからの反射で電子顕微鏡と同様の画像を入手することもできるのです。