A2017(ジュラルミン)への無電解ニッケルめっきの密着性(アルミへのめっき)
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A2017アルミニウム上の無電解ニッケルめっきは、A5052やA6000系材料に比べてあまり密着が良くなく、時に密着不良になるケースがあります。サン工業では前処理工程を材質に応じて変化させていますので、あまり問題になることはないのですが、今回はA2017材に密着不良が出やすい要因を解説したいと思います。
まず、アルカリ性で亜鉛イオンが溶解している液にアルミ製品を浸漬すると、素材のアルミニウムが溶解し、溶液中の亜鉛が表面に析出します。このように、金属が溶解する際に、その電位差によって析出する現象を「置換めっき」といい、特にめっき工程ではジンケート処理と呼びます。これはイオン化傾向から説明される現象になります。
電位差≒イオン化傾向≒イオンになりやすさ≒溶けやすさ
K>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
化学式では、2Al → 2Al3+ + 6e-(アルミニウムがアルカリ溶液に溶解する)
6e- + 3Zn2+ → 3Zn(亜鉛が置換めっきされる)
治具にかかってない状態だと、製品表面全体が溶解して表面に電子が残り、この電子と亜鉛イオンがくっついて亜鉛置換ができるのですが、、、
金属製の治具にひっかけて処理すると、治具を伝わって表面の電気が逃げてしまい、治具の接点周辺に亜鉛置換膜が生成しづらくなってしまい、密着性が低下します。
A2017(ジュラルミン)は成分に銅を含んでいるため、素材自体のイオン化傾向が通常のアルミニウムより低く、そもそも亜鉛置換が起きづらい材質なので、よけいに接点部分の密着が弱くなってしまうのです。
また、通常のアルミニウムの前処理で行われるアルカリエッチングをやりすぎてしまうと、表面に素材の銅が露出してきて、亜鉛置換が起きづらくなるので、この銅の除去が密着性を向上させるポイントになります。