黒いめっきの表面|亜鉛めっきの黒色クロメート【三価、六価】、亜鉛ニッケルめっきの黒色クロメート
- 機能
六価黒クロメートと三価黒クロメートの違い
黒色外観のめっきとして古くから知られているのは、亜鉛めっきの黒クロメートではないでしょうか?
従来の六価クロムを用いた黒クロメート
従来の六価クロムを用いた黒クロメートは、クロメートの成分に銀イオンを含むことで黒色の外観を作りだしています。また、この黒クロメートは比較的厚い(1μm前後)黒色の皮膜を生成しているため、擦れ傷に対しても強く、以下のSEM写真のように三価黒クロメートに比べて平滑なため光沢感のある美麗な黒色外観とすることができます。
三価クロムを主成分とした三価黒クロメート
それに対して、ROHS指令などで六価クロムが制限されたことで新たに開発されたのが、三価クロムを主成分とした三価黒クロメートです。皮膜中には三価クロムの他、コバルトや硫黄を含んで黒味を出しています。三価黒クロメートでは、このような成分の管理が良好な外観を維持するポイントとなります。※金属の硫化物は一般に黒色のものが多いのです。
耐傷性が弱い三価黒クロメートだからこそ、メーカーの技術の差が出る
また、SEM写真のように微小な凹凸が表面にできることで、やや反射を抑えた外観となります。
ただ、六価黒クロメートと違って黒味のある皮膜の厚さが薄いため、耐傷性が非常に弱いといえます。この欠点を補うため、一般に三価黒クロメートの後処理では水溶性クリアのようなトップコートを行う必要があります。
トップコートの方法によっては外観が悪くなったりしますので、外観と耐食性、耐傷性はトレードオフの関係にあり、バランスをどこに求めるかがめっきメーカーの特色となります。
亜鉛めっきの六価黒クロメートの外観画像
平滑な比較的厚い黒色皮膜で、耐傷性にも優れています。クロメート皮膜は皮膜中に水分を含んでおり、これが乾燥される際に、水田の水が引いた時のようなクラックが発生します。このクラックが多いと耐食性を悪化させるため、黒クロメートは高温で乾燥してはいけない、ということになります。
三価黒クロメートの外観画像
細かい凸凹と薄い黒色皮膜の表面となっている。
クロメートの色は何によって決まるのか
亜鉛めっきのクロメートは処理時間によって色が変わります。処理の時間で色が変わるのは、クロメートの膜の厚みが変わることで、光の屈折と反射の原理から色が変わっているように見えるのです。
金属の熱処理や溶接の外周に虹色が出来ることがありますが、あれは酸化被膜の厚みの違いで光が屈折、反射することで見えるものです。
では、黒はどうなのでしょう。実は黒は光の反射を利用してはできません。なので、黒色は別の原理を利用しています。
表面の黒色はどうやって出しているのか
亜鉛めっきの黒色クロメートは六価クロメートと三価クロメートで原理が異なります。
亜鉛めっきの黒色クロメート|六価クロメートの場合
六価クロメートは、銀の酸化物をクロメート皮膜中に含ませることによって黒色を出しています。クロメート皮膜中の銀が多くなるほど、より黒味を出すことができます。
亜鉛めっきの黒色クロメート|三価クロメートの場合
三価クロメートはコバルトを使って黒味を出しています。サン工業ではコバルト濃度を厳密に管理して色味の安定化を行っています。
亜鉛ニッケルめっきの黒色クロメート
では、亜鉛ニッケルめっきの黒色クロメートは、どうやって黒くしているのでしょう。
この流れで行くと、「何かの元素を使っているんだな」と推測したあなた。鋭いですね。
亜鉛ニッケルめっきでは、ニッケルを使って黒くしています。しかし、亜鉛めっきと違って、亜鉛ニッケルめっきのクロメートは、クロメート液にニッケルを添加するのでなく、めっき皮膜中のニッケルを利用しています。
クロメート液でめっき皮膜を溶かすことで、めっき皮膜中のニッケル成分を活用し、クロメート皮膜に取り込ませることで黒くしているのです。
クロメートをどうやって安定化させるか
クロメート液にはいろいろな条件があります。
化学反応なので、温度、pH、濃度が条件として設定されています。
規定された条件で処理をすることが一番ですが、常に同じ条件を維持することはできません。なので、ある程度の管理範囲が存在します。
管理範囲内でどのような変化があるのか、範囲を外れるとどうなるのかを知ることで、管理のポイントを知ることができます。黒クロメートの各条件を意図的に変化させた場合にどういった外観になるか確認しました。
クロムイオン濃度を変えた場合
撮影したカメラと手が写りこんでしまいましたが、ご愛嬌ということでご勘弁ください。濃度が高いと少し干渉色が出ているのが確認できました。ただ、濃度の差が劇的な色の差になっているようには見えないですね。
pHを変えた場合
pHが高い、すなわち酸性が弱くなると干渉色が強くなることがわかりました。おそらく、pHが高くなると酸でめっき皮膜の溶解反応が遅くなるので、黒色がうまく出なかったのかもしれません。
温度を変えた場合
温度は高い方が干渉色が出ていることがわかります。pHでは酸性が弱い(反応がマイルドな)方が干渉色が出ていましたが、温度の場合は温度が高い方(反応しやすい)方が干渉色が出ています。反応が強い方がいいのか弱い方がいいのか、pHと温度では何かが違うようです。
黒色めっきについて、お気軽にお問い合わせください
サン工業では亜鉛ニッケルの黒色クロメートに対応しています。お問合せも頂いていて、量産品が動いています。黒色をやってみようと思ったら、ぜひサン工業にお問い合わせください。
ちなみに…
あなたは「pH」をどう読みますか?「ペーハー」か「ピーエイチ」かのどちらかだと思います。私が、大学生の時に教授に言われたことを今でも覚えています。
私が「ペーハー」と言うと、「あなたはドイツ語で論文を書くんですか」と指摘されました。論文にも作法があるんですね。そもそも、学位論文は英語ですらありませんでした。しかし、それ以後ペーハーということに抵抗を覚えてしまいました…。あなたはペーハー派ですか?ピーエイチ派ですか?
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